花粉症は、鼻づまりや鼻水などの症状だけではなく、「花粉皮膚炎」のように、かゆみや赤みなどの肌トラブルとなってあらわれることがあります。
「花粉皮膚炎」は、バリア機能の低下した皮膚に花粉が付着して炎症が起こりますが、予防には、外側からのケアだけでなく、睡眠、腸内環境、栄養バランスなどによるインナーケアも重要と考えられています。
花粉症にたいする食べ物などによる民間医療について、”効果はわずか”とする意見もありますので、この点についても、はじめに触れておきます。
花粉が「肌荒れ」の原因に!食べ物などによる民間療法は効果無し?
花粉症の症状といえば、鼻水や鼻づまりですが、このような症状がでなくても、花粉が飛ぶ時期だけ肌荒れが起こることがあります。
花粉症による肌荒れは「花粉皮膚炎」と呼ばれ、かゆみや赤みなどの症状がでて、ひどくなると睡眠に支障が出ることも。
花粉皮膚炎は、肌質によるものなのか花粉によるものか、判別がつきにくいのでケアが遅れがちですが、スギやヒノキの花粉の季節に症状がでやすく、女性に多いのが特徴です。
日ごろのスキンケアをしっかりおこなっていれば、部分的には症状が軽くてすむかもしれませんが、全身の肌へのケアには、食べ物などによるインナーケアは欠かすことができません。
健康に良い栄養素を含んでいる食べ物でも、なかには花粉症を悪化させる可能性がある食べ物もあります。花粉皮膚炎の症状を悪化させないためにも、食べ物に関する知識を持っていたほうが良いのは確かでしょう。
花粉がなぜ肌荒れの原因に?
花粉症は、異物である花粉(アレルゲン)が粘膜や皮膚に付着したときに、これを取り除こうとするアレルギー反応です。
くしゃみや鼻水は、アレルゲンである花粉をカラダから除去しようという反応ですが、肌荒れによるかゆみや赤みも、これと同じ。
肌が敏感だったり、アトピーがあると、肌のバリア機能が低下しているため、炎症反応を起こしやすくなります。
皮膚のバリア機能が低下する原因としては、かゆいところを強く擦(こす)って皮膚にダメージをあたえたり、肌が乾燥して水分量が少ないことなどがあげられます。
また、花粉は腸の粘膜からも吸収されますから、腸内環境をととのえることも、花粉症対策として効果的と考えられます。
肌にとってインナーケアが重要な理由・「線維芽細胞」の役割
皮膚の乾燥や水分量の低下によって肌のバリア機能が衰えると、肌荒れなどのトラブルが生じることがわかっています。
外側からのスキンケアで水分を補充したり、さまざまな美容成分で肌の調子をととのえることができますが、多くのスキンケアアイテムは、角質層までの効果しか訴求できません。
ナイアシナミドのように、角質層のこまかなシワだけでなく、皮膚の深い部分のシワへの効果が確認されている薬用成分もありますが、このような薬用成分は例外といえるでしょう。
肌のハリやツヤ、弾力性などをつくりだしているのが、三大美容成分「コラーゲン」「ヒアルロン酸」「エラスチン」で、これらの美容成分は、真皮層にある「線維芽細胞」でつくられます。
線維芽細胞のはたらきが悪いと、肌の調子も悪くなり、皮膚のバリア機能も低下することになります。
加齢や紫外線などによるバリア機能の低下によって、肌が乾燥すると、シワができるだけでなく、花粉皮膚炎などの肌荒れが起きやすくなるわけです。
この線維芽細胞のはたらきを活性化するには、一般的な化粧品による外側からのケアだけでは十分ではなく、内側からのインナーケアが欠かせないと考えられます。
「花粉皮膚炎」食べ物によるインナーケアは効果無し?
花粉症、あるいは「花粉皮膚炎」に効果があるとされる食べ物(食品)については、ネット検索でも、漢方薬やサプリメントを含め、いろいろ調べることができます。
しかし、これらの食べ物などによる民間医療の花粉症への効果については、ネガティブな考え方があるのも事実です。
しかし、処方薬のような即効性が無いとはいえ、食品に含まれるさまざまな栄養素の効果を否定することはできません。
厚労省「花粉症の民間医療について」での患者さんへの説明
厚生労働省HP「花粉症の民間医療について」では、患者さんに対して、つぎのように説明しています。※一部抜粋
最近は、お茶、乳酸菌、いわゆるサプリメントなどにも花粉症の症状の緩和作用が指摘されています。盲検試験(※)でも効果が認められた報告もありますが、その結果はわずかですし、有用性の確認にはまだまだ検討の積み重ねが必要です。
引用元:「花粉症の民間医療について」から一部抜粋
※盲検試験とは、プラセボ(偽薬)との効果を比較した試験のこと。新薬の効果を検証するときにもおこなわれる試験です。
花粉症にたいする民間治療は、科学的に評価されている治療法と比べて検証が難しいのは確かです。
しかし、ポリフェノールなどの有効成分を多く含む食品は、副作用の心配が少なく、安心して摂り続けることができるだけでなく、その効果を感じている方も多いのではないでしょうか。
ちなみに、「花粉症の民間医療について」には、民間療法の患者さん自身の評価(未記入除く)として、次表を掲載しています。
効果有 | 効果無 | 不明 | |
---|---|---|---|
漢方 | 50% | 35% | 15% |
甜茶 | 14% | 51% | 35% |
鼻スチーム療法 | 46% | 44% | 10% |
鼻洗浄療法 | 46% | 54% | 0% |
クロレラ | 8% | 44% | 48% |
ハリ | 44% | 44% | 11% |
花粉グミ | 29% | 64% | 7% |
シソジュース | 18% | 36% | 45% |
シジュウム茶 | 40% | 40% | 20% |
いずれの民間療法も、「効果無」の回答が少なくありませんが、「効果有」の割合も少ないとは言えません。
そもそも花粉症対策は、生活習慣や食生活などを改善することで、症状を少しでも軽くおさえることができればベター。
効果があると考えられる食べ物などを試してみることは、カラダに悪い影響が無ければ、ムダとは言えないはずです。
花粉症に効果があると考えられる食べ物
花粉症に効果があるとされてきた食べ物には、つぎのようなものがあります。
これらの食べ物の中から、免疫機能や肌の調子をととのえるのに役立つ代表的な食品を紹介します。
- 乳酸菌(ヨーグルト、キムチなど)
・乳酸菌はヨーグルトやキムチにも含まれ、カラダの免疫機能に深くかかわっています。腸内免疫を正常化し、アレルゲンである花粉が腸から体内に取り込まれにくくなるだけでなく、過剰な免疫反応をおさえる働きもあるようです。 - 青魚(イワシ、アジ、サバなど)
・イワシ、アジ、サバなどの青魚には、アレルギーを引き起こす物質の1つであるヒスタミンの働きを抑えてくれるDHA、体内の免疫反応の調整やアレルギー疾患などに効果があると言われるEPAが含まれています。 - 食物繊維(レンコン、ゴボウ、キノコなど)
・レンコン、ゴボウ、キノコ類には、腸内の善玉菌のエサになる食物繊維が多く含まれており、腸内環境を整えることで、免疫機能を高めることができます。 - カカオポリフェノール
・チョコレートに含まれるカカオポリフェノールは、免疫機能に作用しアレルギー症状を抑えると言われ、花粉症の予防、症状を和らげる効果が期待できるとされています。抗酸化作用による美肌効果が期待できますが、ポリフェノールを多く含む高カカオチョコレートを選ぶのがポイントです。 - 梅干し
・梅干しだけに含まれているとされるバニリンという成分には、花粉症のアレルギーを抑える効果が期待できると言われています。
花粉症で避けたほうがよいとされる食べ物
栄養的にすぐれた食品のなかにも、花粉症を悪化させたり、別のアレルギー症状を引き起こす可能性のある食品もありますので、注意が必要です。
- トマト
・トマトは、イタリア料理や地中海料理には欠かせませんが、スギ花粉症の人がトマトを食べると、唇にピリピリした刺激を感じることがあります。トマトのタンパク質とスギ花粉のタンパク質が似ているので、アレルギー反応が起きるようです。 - トランス脂肪酸を多く含む食品
・トランス脂肪酸を摂り過ぎると、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などアレルギー疾患の罹患率が上がるとされています。マーガリンは、かつてはトランス脂肪酸が多い代表的な食品でしたが、現在は、メーカー努力によりかなり改善されています。とはいえ、ジャンクフードなどは控えたほうがいいでしょう。 - メロン・スイカ
・イネ科の植物やヨモギやブタクサの花粉症の人は、メロンやスイカを食べると、唇が腫れたりピリピリする症状がでやすいようです。ほかの花粉症では、リンゴ、モモ、ナシ、キウィなどで、同じような症状がでることがあります。
まとめ
花粉によって肌にかゆみや赤みが生じる「花粉皮膚炎」は、乾燥などによって、肌のバリア機能の低下が大きな原因になっていますが、外側からのケアだけでは十分ではありません。
肌のバリア機能を高めるためには、真皮層にある線維芽細胞のはたらきを活性化して、三大美容成分「コラーゲン」「ヒアルロン酸」「エラスチン」の産生を促すことが効果的と考えられます。
食べ物による花粉症予防については、効果の確認ができていないとする意見もありますが、カラダに悪い影響があるものでなければ、試してみる価値はあるでしょう。
美容ドリンクやサプリメントには、不足しがちな栄養素をおぎない、線維芽細胞にはたらく成分を配合したものがあります。
直接的に、花粉症や花粉皮膚炎を予防するわけではありませんが、飲み続けることで、美肌への効果を実感している方が多いようです。
なんといっても、食べ物や美容ドリンクは、カラダの内側から全身へのケアができるのが大きなメリットといえるでしょう。